・限定イコカ、30分で「完売」…残りは社内販売
JR西日本広島支社が広島駅(広島市南区)で3月、特別デザインのICカード乗車券「ICOCA(イコカ)」1000枚を限定発売したところ、約880枚を売った30分間で駅員が「完売」と打ち切り、残りを社員27人に〈内部販売〉していたことがわかった。
窓口では「1人5枚まで」としながら、50枚を大量購入した社員もいた。鉄道ファンらからは「客本位のサービスとは思えない」と批判の声が上がっている。
同支社によると、限定版は西日本、九州、東海3社のICカード乗車券の相互利用の開始を記念して、3月5日に西日本管内で計3万枚を一斉発売。同支社の割り当て2000枚の半分を広島駅で売った。1枚2000円(保証料500円、運賃代1500円)で、数日前から駅構内にチラシを貼ってPR。「広島駅1000枚(お一人様5枚まで)」で、販売時間を「午前7時〜発売枚数完売まで」としていた。
発売当日は臨時窓口を設置。午前7時から行列ができ、30分で約880枚が売れた。しかし、担当駅員7人が「行列が途絶えた」として、売り切れていないにもかかわらず窓口を撤去した。
すぐに広島総合指令所が支社管内の有人76駅に、「完売」を連絡。「問い合わせがあった場合、広島駅の販売は終了したと伝えるように」と告げたという。
社員27人の中には、事前購入の問い合わせをした者もいた。また、50枚をまとめ買いし、社内ルールに反してクレジット購入を認めたケースもあった。
JR九州もICカード乗車券1万枚を15駅で限定販売。小倉駅では1000枚を午前7時から販売し、午後2時半に完売した。同社広報室は「担当者が乗客らに呼びかけて完売した。事前に1000枚を販売するとしていたなら、その数を売るのが当然」とする。
JR東海も同様の記念乗車券を3月5日に販売。静岡、愛知など4県37駅で計1万枚を売った。東京広報室は「限定グッズは、お客様にすべて売り切る。うちでは社員向けに売った例を聞いたことがない」としている。
広島支社の小南雅彦・企画次長は「現場社員の判断で販売窓口を早く片付けただけ。営業効率の優先を考えると社員向け販売は仕方ない。完売してなかったが、お客様をだましたという意識はなく、問い合わせもなかった」と話している。JR西日本は「支社の発表以外、コメントはない」としている。
JR西日本の企業体質に詳しい広島大の築達延征教授(経営組織論)は「(同支社は)強力な競合他社のない環境にあるため、サービス面であぐらを組む原因となっている」と指摘する。
20年来の鉄道ファンで、愛好家グループの代表も務める広島市安佐北区の小野和彦さん(32)は「ここ数年、限定デザインのICカード乗車券を収集する人も増えており、支社の一方的な判断で販売を打ち切ったことは残念だ。客の目線に立った販売やサービスを提供してほしい」と話した。(薮上遼介)
(記事引用:『読売新聞』WEB 2011年5月21日掲載)
安芸矢口企画代表の小野がコメントを出しています。
暇人会にもICカード・磁気カードの熱心な収集家がおり、参考にさせてもらいました。